保険業界に何故ライフサイエンス業界の専門家が少ないか

皆様お世話様です。
TSI船着久稔です。

今日のテーマは、「保険業界にライフサイエンス業界をわかるものが少ない」という点について書きます。

ずばり「保険会社が保険商品を作る」ことがスレ違いを起こしている一因だと言えます。
一般的に企業リスクも主要な点では同じです。「生産物賠償」「施設賠償」「雇用慣行賠償」最近では「サイバーリスク」、各保険会社の商品部はこの点に主眼を置いて保険商品を作っています。

一方でライフサイエンス業界は独特な慣習や、言葉、さらに研究段階では「物」の定義も違いますし、その「物」を貸し出して試験が行われたり、外国企業の試験を日本で行ったり、臨床試験においてはGCP、またはIRBの方針で、ほぼ「強制保険」化している実態、さらには、「付保証明書」(certificate)も場合によっては「大至急!」ということも珍しいことではありません。(おまけにクライアント側から保険契約締結を求められる)

つまり、他業種にない慣習やルールが存在しながら、マーケットとしては全体業種の中の一部という背景から「保険会社社員」がついて来れていない(この分野に特化することが出来ない)という事情があります。

さらに、局面においては「共感する心」「洞察する目」「実行する知識」が必要となるわけですが、サラリーマン人生で(保険会社社員)ライフサイエンス業界わることは僅かな期間であるため、よほどのことが無いか限り「勉強しよう」ということにならないのが実態です。

例えば、「IRBが2週間後なんです・・・」という状況があったとします。
IRBの意味が分からなければ、「それは大変だ!」とはなりにくい訳で、結局間に合わずということも発生してしまいます。

保険料試算も時間がかかり、わからないから後回しになったり、わかろうとして的外れな質問が返ってきたりします。
「共感する心」
IRBが2週間後であれば、それまでにCetificateが必要になるわけで、ここに理解が無ければ共感すらできません。「それは困りますよね」
「洞察する目」
なぜ、このタイミングになってしまったか察することも重要です。「CROからいわれたのかな?」「だれも保険手配に気が回らなかったのかな?」
このあたりの理解を共有できる専門家がいれば心強いのではないでしょうか。
「実行する知識」
保険会社もライフサイエンス業界についてはよくわからない。これは前述のとおりです。しかし、保険業界、創薬業界、両方の事情を理解するものが通訳し、実行することでスケジュールに間に合わすことも出来ます。

実際、自動車保険に強い代理店であれば、「車が今日納車なのですが保険をかけるのを忘れていて…」等というときも「車検証」さえあればその場で手続きできて納車までに保険が間に合う。ということと似たようなイメージです。

私は25年間、ライフサイエンスに関わる賠償保険を専門に扱っています。保険会社からも様々な照会を受けるのですが、彼らもプライドがあり「しらない」「わからない」とは言えず時間ばかりかかることがあるようです。

これからはグローバルな試験や契約が多くなると認識していて、この点も話をややこしくしている要因の一つです。
MSAが英語でも、プロトコルが英語でも中国語でも、基本は「共感する心」「洞察する目」「実行する知識」があれば、専門保険代理店としてお役に立つことが出来るでしょう。

ところで…
私にも困ったことがあります。
後継者がいないのです。
保険会社の人間にいくら話しても、大切な3点を本気で理解できないのか、頭で解決しようとする方がほとんどです。
まあ、だからこうやって競争相手が少ない中で商売が出来るのかもしれません。

なかなか引退できずに62歳になってしまいます・・・

TSI船着久稔

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