CROとSMOの賠償責任保険設計で押さえるべきポイント

医薬品の臨床試験(治験)を支えるCRO(医薬品開発業務受託機関)やSMO(治験施設支援機関)は、治験の品質と安全性を守る重要な役割を担っています。しかし、これらの組織が直面するリスクと、そのリスクをカバーするための賠償責任保険の設計は、実は業務の性質によって大きく異なります。

今回は、特に「SMOにはE&O保険(業務過誤賠償責任保険)が存在しない」という実態を踏まえ、CRO・SMO向け保険設計のポイントとリスク管理の考え方について解説します。


CRO向け賠償責任保険の特徴

CROは治験データの管理や治験実施の一部代行など、多岐にわたる業務を請け負うため、業務過誤による損害賠償リスクが比較的高いのが特徴です。例えば、治験データの入力ミス、SAE(重篤有害事象)報告の遅延、契約違反などが挙げられます。

こうしたリスクに備えるため、CRO向けの保険設計ではE&O保険が基本となります。E&O保険は、業務の過誤や怠慢によって第三者に損害を与えた場合の賠償責任をカバーし、治験の信頼性維持に不可欠な補償です。

また、個人情報保護法の強化に伴い、被験者情報の漏洩リスクに対応する情報漏洩・サイバーリスク特約も付加されることが増えています。さらに、国際共同治験が増加する中で、海外拠点でのリスクに対応する海外対応特約も重要なポイントです。


SMOにE&O保険が存在しない理由

一方で、SMOの業務は治験施設の現場支援や調整が中心であり、CROと比べて法的責任の範囲が限定的です。このため、一般的にSMO向けのE&O保険は市場で提供されていません。

これは、SMOの業務内容が責任医師やCROの指示に基づく支援業務であること、契約上も責任が限定的であることが背景にあります。保険会社側も引受けリスクの評価が難しいため、SMO単体のE&O保険商品はほとんど存在しないのが実情です。


SMOのリスク管理と契約上のポイント

SMOのリスク管理は、保険での補償よりも契約による責任分担の明確化が肝要です。具体的には、SMOのミスによる損害については、CROや治験依頼者が負担することを契約上で定めるケースが多く見られます。

また、SMO内部でのリスク低減のための業務フローの整備や従業員教育も重要なリスク管理策となります。


実務的な保険提案の流れ

  1. 業務内容の詳細確認
    CRO・SMO双方の業務範囲、委託関係、契約上の責任分担を丁寧にヒアリングします。

  2. CROの保険ニーズ評価
    E&O保険、情報漏洩保険、海外対応特約など必要な補償を設計します。

  3. SMOのリスク管理提案
    保険補償が限られるため、契約リスク分担の見直しや業務品質向上策を提案します。

  4. 総合的リスクマネジメント
    契約と保険を連携させて両者のリスクを補完し、治験業務の安定化を図ります。


まとめ

治験のリスクは多様かつ複雑であり、CROとSMOの業務特性によって保険設計の考え方が異なります。
CROにはE&O保険を中心とした充実した補償が必要ですが、SMOには市場でE&O保険が存在しないため、契約上のリスク分担を明確化し、内部統制を強化することが実務上のポイントです。

当社ではライフサイエンス業界に特化した知見を活かし、CRO・SMOの実態に即した最適な賠償責任保険のご提案を行っております。ぜひお気軽にご相談ください。


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