はじめに:契約書の「Indemnification(補償)」条項、読み飛ばしていませんか?
ライフサイエンス保険アドバイザーの船着です。
海外での治験プロジェクトや、海外製薬企業からの受託業務(CRO業務)が増える中、皆様のデスクには分厚い「英文契約書(MSAやCTA)」が積み上がっていないでしょうか。
法務担当者がチェックしているから大丈夫? 本当にそうでしょうか。
長年、この業界の「契約」と「保険」の隙間を見てきましたが、「法務的にOKな契約」でも「保険では免責(支払い対象外)」になっていて、会社が数十億円のリスクを裸で背負っているケースが後を絶ちません。
今日は、多くの担当者が見落としている「3つの落とし穴」についてお話しします。
落とし穴①:「一般賠償責任保険」では、治験リスクは守れない
よくある間違いが、「会社で加入している包括賠償責任保険(General Liability)があるから大丈夫」という思い込みです。
一般的な企業の賠償保険と、我々が扱う「ライフサイエンス賠償責任保険」は、似て非なるものです。
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一般の保険:「生産物」や「専門業務」に起因する身体障害リスクは、免責や低い限度額に設定されていることが多い。
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ライフサイエンス特化保険:治験による健康被害、医療機器の不具合、そして「効果がなかったことによる経済的損失(E&O)」までカバーします。
もし、海外の委託元から「専門職業賠償責任(Professional Liability)を付保せよ」と求められているのに、一般的な賠償保険の証券コピーを提出しているとしたら……それは契約違反のリスクを抱えています。
落とし穴②:海外現地で「保険証券」が必要な場合、どうしていますか?
海外治験を実施する際、現地の法律(Compulsory Insurance)により、現地の保険会社が発行した証券(ローカル証券)の提示が義務付けられる国が多くあります。
その都度、現地のブローカーを探して手配していませんか? 実はそれ、「コストの無駄」であり「管理の穴」です。
日本側で親契約(マスター証券)を一本構築し、そこから世界各国の現地証券をコントロールする「グローバルプログラム」を組めば、保険料コストを最適化できるだけでなく、「現地で実は保険が切れていた」という最悪の事態を防げます。
円安で海外売上高(保険料算出基礎)が膨らんでいる今こそ、このスキームによるコスト削減効果は絶大です。
落とし穴③:CROを襲う「サイバーリスク」は、ただの情報漏洩ではない
最近、私が最も警鐘を鳴らしているのが「治験データの消失・停止リスク」です。
ランサムウェア等でサーバーがダウンした場合、単なる「情報漏洩(お詫び金)」だけでは済みません。 「データが復旧できないため、治験が3ヶ月遅延した。その分の追加費用と逸失利益を賠償せよ」 委託元である製薬会社から、このような巨額請求が来る可能性があります。
これは通常の賠償保険ではカバーしきれない領域ですが、「サイバーリスク補償特約」等を適切に組み合わせることで、事業の存続を守ることができます。
最後に:保険を売るのではなく、「隙間」を埋めるのが私の仕事です
私は現在、特定の保険会社の商品をただ売るのではなく、「クライアントの事業と契約書を守る黒子(くろこ)」として活動しています。
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英文契約書の「Insurance Clause」のレビュー
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現在の保険証券と、事業実態の「隙間(Gap)」診断
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海外治験の現地証券手配のサポート
これらを「セカンドオピニオン」として提供しています。
「今の代理店は、ライフサイエンス特有の話が通じない」 「海外契約のリスクが本当にカバーされているか不安だ」
そう感じたことのある方は、ぜひ一度、お手元の契約書と証券コピーをご用意の上、ご相談ください。 貴社の開発プロジェクトを、リスク管理の面から強力にバックアップいたします。
【お問い合わせ】 ライフサイエンス保険アドバイザー
(株式会社TSI) 代表 船着 久稔 (funatsuki@tmnf-tsi.co.jp)



