こんにちは、船着です。
日本のバイオテクノロジー技術や創薬シーズが海を渡り、グローバルな舞台で臨床試験(治験)が行われることが当たり前の時代になりました。しかし、海外での活動には、日本国内とは比較にならないほど複雑で高額なリスクが潜んでいます。
「現地の提携先に言われるがまま保険に入っている」 「日本で加入しているPL保険(生産物賠償責任保険)があるから大丈夫」
もし、貴社のリスクマネジメントがこのような状態であれば、万が一の際に数億円規模の損失を被る可能性があります。
本日は、ライフサイエンス業界専門の保険ブローカーの視点から、海外治験やグローバルCRO業務を成功させるための「保険プログラムの組み方」について解説します。
1. 一般的な「賠償責任保険」では守れないリスク
まず、最も重要な誤解を解く必要があります。 一般的な「企業包括賠償責任保険(CGL)」や「PL保険」は、主に身体障害や財物損壊を補償するものです。
しかし、ライフサイエンス企業やCROにとって、真に恐ろしいリスクはそれだけではありません。
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経済的損失(Financial Loss)のリスク
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治験データの集計ミスにより、承認申請が遅れ、スポンサー企業に巨額の損害を与えた。
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医療機器の仕様不適合により、回収費用や代替品の提供費用が発生した。
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契約上の加重責任
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契約書(Indemnification Clause)に基づき、法的な責任を超えて相手方の損害を補償しなければならないケース。
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これらは、一般的な保険では免責(対象外)となることがほとんどです。弊社が推奨する「ライフサイエンス専門の賠償責任保険(E&O含む)」であれば、こうした純粋な経済的損失や契約上の責任までカバーすることが可能です。
2. 「マスター証券」+「ローカル証券」という最適解
海外で治験を行う、あるいは海外支店を持つ場合、保険の手配方法は大きく2つに分かれます。
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現地ですべて手配する
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日本からグローバルプログラムを組む
私たちは、圧倒的に後者(グローバルプログラム)をお勧めしています。
海外各国には、その国独自の保険規制(Admitted規制など)があり、現地の保険会社が発行した証券(ローカル証券)が必要な場合があります。しかし、現地の証券任せにすると、補償内容にバラつきが出たり、補償限度額が不十分だったりするリスクがあります。
【推奨するプログラム構成】
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日本(親会社):マスター証券(Master Policy)
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全世界を包括的にカバー。各国のローカル証券で補償されない隙間(DIC)や、限度額超過部分(DIL)を日本側でコントロールします。
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海外現地:ローカル証券(Local Policy)
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治験実施国や拠点のある国で、現地の法律・規制をクリアするために発行します。
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このように、日本発のマスター証券で全体を統括することで、「世界中どこで事故が起きても、日本水準の補償と対応」を確保することができます。Chubbなどのグローバル対応が可能な保険会社と連携し、1つの証券で国内外のリスクを一元管理できるのが強みです。
3. 治験(Human Clinical Trial)特有の要件への対応
海外治験では、倫理委員会(IRB)や規制当局への提出書類として、現地の法律に準拠した「治験保険証明書」が必須となります。
国によっては、無過失補償(Non-Fault Compensation)が義務付けられている場合もあり、これに対応していない保険証券では治験の許可が下りません。私たちは、各国の最新の治験補償要件に精通しており、スムーズな治験開始をバックアップします。
4. 最後に:専門家と共に「安心」を設計する
ライフサイエンス業界のリスクは、技術の進歩と共に日々変化しています。 単に「保険に入る」のではなく、「貴社のビジネスモデルに合わせたプログラムを設計する」ことが、私たちの仕事です。
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海外CROとの契約内容に不安がある
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これから米国・欧州・アジアで治験を予定している
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現在の保険がE&O(業務過誤)までカバーしているか確認したい
そのようなお悩みをお持ちの担当者様は、ぜひ一度ご相談ください。貴社の革新的な挑戦を、リスクマネジメントの側面から全力でサポートいたします。
お問い合わせ 株式会社TSI グローバル保険プログラム・アーキテクト 船着 久稔



