保険会社がまだ知らない「DCT(分散型臨床試験)」

治験の現場は変わった。保険はどうだ?

「ドラッグ・ロス」という言葉がニュースを賑わせ、行政も国を挙げて解消に動いています。その切り札として急速に普及しつつあるのが、分散型臨床試験(DCT:Decentralized Clinical Trials)です。

患者様が病院に行かなくても、自宅で治験薬を受け取り、ウェアラブルデバイスでデータを送る。 これは患者様にとっても、製薬会社にとっても「希望の光」です。

しかし、ここに一つ大きな「落とし穴」があります。 「保険会社が、DCTのリスクを正しく理解していない」 という事実です。

今日は、ライフサイエンス特化の保険代理店の弊社が、今まさに水面下で行っている「保険会社への教育」と、これからDCTに取り組む治験依頼者の皆様が知っておくべき「未来の賠償責任」についてお話しします。

私の役割は「保険を探すこと」ではなく「保険会社に教えること」

普段、私はクライアント(製薬会社様、CRO様)のリスクを分析していますが、最近は時間の多くを「保険会社のアンダーライター(引受担当者)へのレクチャー」に割いています。

なぜか? 従来の保険約款は、「病院という閉じた空間」での事故を前提に作られているからです。

  • 「治験薬が宅配便で患者宅に届く際、温度管理に失敗したら誰の責任?」

  • 「訪問看護師が患者宅の高級絨毯を汚したら、それは医療過誤か?一般賠償か?」

  • 「自宅のWi-Fi経由で治験データが漏れたら?」

保険会社は「前例のないリスク」を嫌います。放っておくと、「DCTはリスクが見えないから引受不可」、あるいは「法外な保険料」を提示してくる可能性があります。

だからこそ、元国会議員秘書として法律や行政の動きを熟知し、バイオ業界の現場を知る私が、彼らに説くのです。 「これは『未知のリスク』ではない。『分散されたリスク』であり、こうすれば管理できる」と。

保険会社にリスクの正体を正しく理解させ、適切な料率を引き出す。これが、本来あるべき私共の仕事だと自負しています。

予測:DCT時代の賠償保険はこう変わる

では、これからDCTを選択して治験を行う場合、保険はどうあるべきでしょうか?私の予測と、現在設計中の構想をお伝えします。

1. 「包括的」なリスクヘッジが必須になる

従来は、病院のリスク、CROのリスク、物流のリスクと縦割りでした。しかしDCTでは、責任の所在が複雑に絡み合います。 今後は、治験依頼者がマスター契約となり、配送業者や訪問看護ステーション、デバイスベンダー等のリスクを一つの証券でカバーする「DCT専用パッケージ」が主流になるでしょう。隙間を作らないことが、最大の防御です。

2. サイバーリスクは「オプション」ではなく「主役」へ

DCTにおいて、データは血液と同じです。システムダウンによる治験の中断や、データ改ざんによる再試験のコスト。これらをカバーしない保険は、もはや保険とは呼べなくなるでしょう。

3. 海外のカントリーリスクとの融合

DCTは国境を越えやすくなります。海外の患者様が自宅で参加するケースも増えるでしょう。各国の法規制(GDPR等)と日本の保険をどう接続するか。ここが腕の見せ所になります。

最後に:変化を恐れない皆様へ

「新しいことをやりたいが、リスクが怖くて踏み出せない」 そうお考えの治験依頼者様、CRO担当者様。

どうぞ、その「新しい仕組み(DCT)」を私にぶつけてください。 既存の保険商品がなければ、私が保険会社を説得し、御社のための新しい「盾」を作ります。

「他社が手出しできない分野」こそ、私の主戦場ですから。

株式会社TSI 船着久稔

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