こんにちは!株式会社TSIの船着(ふなつき)です。
治験のデジタル化(EDCやリモートモニタリング等)が進む中、「うちはライフサイエンス専門の賠償責任保険に入っているから、データのトラブルも安心だ」と思っていませんか?
実は、そこには大きな「落とし穴」があるかもしれません。 今日は、多くの企業様が誤解しやすい「業務過誤」と「サイバー攻撃」の補償の違いについて解説します。
1. その「データ消失」、原因はどっち?
治験データが消えてしまった!という最悪の事態。実は「原因」によって、使える保険が全く違うことをご存知でしょうか。
ケースA:従業員の操作ミスでデータを消してしまった
これは「業務上の過失」にあたります。 弊社でご案内している『ライフサイエンス賠償責任保険』の「業務過誤(E&O)」という補償では、こうした作業ミスによる第三者のデータ・ソフトウェアへの損害をカバーできる設計になっています(※Coverage D )。
ケースB:ハッカーからのランサムウェア攻撃でデータが暗号化された
ご注意ください。ここが落とし穴です。 外部からの悪意ある「サイバー攻撃」によるデータの破損や消失は、通常の賠償責任保険では「免責(補償対象外)」となるケースが一般的です。
つまり、「ミスには強いが、攻撃には無防備」という状態になっている企業様が非常に多いのです。
2. CRO・ライフサイエンス企業に必要な「2階建て」の備え
だからこそ、私たちが推奨しているのが以下の「2階建て」のリスク対策です。
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1階部分:ライフサイエンス賠償責任保険
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治験中の健康被害、個人情報のうっかり漏洩、業務ミスによるデータの破損、契約違反(報告遅延)などをカバー。
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2階部分:サイバーリスク保険(またはサイバー特約)
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不正アクセス、ランサムウェア、標的型攻撃によるシステムの停止やデータ消失、およびそれに伴う調査費用や賠償金をカバー。
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特にCRO業務では、お預かりしている情報が「極めて機密性が高い」ため、ひとたびサイバー事故が起きれば、賠償額だけでなく、原因調査や対応費用も高額になります。
3. 実際の事故対応フローも異なります
サイバー攻撃を受けた場合、通常の事故対応とは異なり、IT専門家によるフォレンジック調査(原因究明)が初動で必要になります。
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通常の事故: 状況整理 → 弁護士対応 → 示談
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サイバー事故: システム遮断 → IT専門家による調査 → 個人情報保護委員会への報告 → 弁護士対応
この「専門的な初動対応」をスムーズに行うためにも、専用のサイバー保険(特約)をセットしておくことが、事業を守る命綱となります。
最後に:御社の保険は「攻撃」に耐えられますか?
「うちは特約を付けていたかな?」「賠償保険だけで安心してしまっていたかも…」 そう感じた方は、ぜひ一度証券をご確認ください。
私たち株式会社TSIでは、「業務ミス(賠償責任)」と「サイバー攻撃(サイバー保険)」の境界線を明確にし、抜け漏れのないリスク対策をご提案しています。
複雑なライフサイエンス領域のリスクだからこそ、専門家の視点でのチェックをおすすめします。
最後に:リスクマネジメントは「転ばぬ先の杖」
サイバーリスクは、もはや「対岸の火事」ではありません。 万が一の事故発生時には、以下のようなフローで迅速な対応が求められます 。
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保険会社への初動報告
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被害状況の整理と社内調査
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弁護士・専門家による対応
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示談交渉・訴訟対応
これらのプロセスをスムーズに進め、経営へのダメージを最小限に抑えるためにも、事前の準備が重要です。



